さて、いかがだったでしょうか? 自作版2012年映画ドラえもん。

とりあえず、自作ストーリー公開までのあらましを解説します。


今年の3月5日。「のび太と新・鉄人兵団」が公開され、自分はその初日の初回で見に行きました。その映画はまあ、そこそこ面白かったです。そして、気になったのは来年の映画ドラえもんにモアが出てくるらしい、というおまけ映像でした。
モアが出るということで、考えられるのは「モアよドードーよ永遠に」を利用した内容になるだろう、ということ。雲の王国リメイクという噂もありましたが、それは無いだろうと。
そして、おまけ映像を制作したのは、「楠葉宏三、杉崎聡、増泉路子」。例年どおりであれば、おまけ映像を制作した人間が、次回作の監督になる。つまり、アニメ「ドラえもん」の総監督、楠葉宏三氏が、次回作の監督になる確率が非常に高い、と。

ハッキリ言って、次回は楠葉監督になる可能性が高い、というニュースに、「期待出来る」という感情は一切湧きませんでした。
30周年映画ドラえもん、「のび太と人魚大海戦」。
楠葉氏が監督を務めた、この映画は、どうにもこうにも酷すぎるという感想でした。世間の評価も賛否両論ならまだしも否の感想しかないという有様。
ただですら、わさドラ初のオリジナル、「緑の巨人伝」も、ろくでもない出来だと思っていたので、映画ドラえもんはもうダメだという印象すら持ってしまいました。

なので、来年はまたも楠葉監督が担当する可能性が高いということで、「来年はダメだろう」と既に諦めのような気持ちと、同時に、奇妙な考えが浮かびました。

「もしも、自分が、来年の映画ドラえもんを作る立場ならば、絶対に楠葉監督よりも、面白いドラえもんが作れる」

実際、自分はドラえもんの2次創作みたいな同人活動をしていたことがあったので、他人よりドラえもんを作れるという気持ちは人一倍あったのです。どんなに自分の拙いドラえもんシナリオでも、人魚大海戦よりかは、まともに作れるだろう、と。


そして、「新鉄人兵団」映画公開翌日の3月6日。「2012年映画ドラえもんを勝手に自作するブログ」というタイトルで、ブログを立ち上げ、視聴者が公式と勝負するという謎の企画はスタートしたのです。

原作短編「モアよドードーよ永遠に」。ここからどう引き延ばしていくのか?
どうすれば、面白いドラえもんを作れるのか?

そして、どうすれば、自分の企画がシンエイ動画に勝てるのか?

勝負にあたり、それまでのわさびドラえもん映画から、制作側には特殊なルールがあるのではないか? と考えました。
それが以下のようなことです。
①上映時間を90分~100分の間とする。
②美少女キャラクターがゲストキャラとして登場する。
③ドラミが登場する。
④泣きの要素を入れる。

まず①、上映時間は90~100分に収めるということ。これは例年のドラえもん映画の上映時間から、恐らく90~100分あたりがベストだと推測しています。
新鉄人兵団で監督を務めた寺本監督は、インタビューで
「ただ今回は90分に収めて欲しいという要望が強く、そのプレッシャーは大きかったです。旧作も90分でしたが、旧作にプラスアルファ、今回は「ピッポ」と いうキャラクターを入れたので、それで90分に収めるのはかなり厳しかったです。結局切っても切れなくて107分になってしまいましたが。」と発言しています。
http://www.nikkei.co.jp/category/offtime/eiga/interview/article.aspx?id=MMGEzu000007032011

なので、今作は出来る限りシナリオは90分に収まるよう意識しています。実際コンテを切ったり作画するにあたってオーバーする可能性は否定しませんが、それでもとてつもなく大幅にオーバーすることはないのではないか、と考えています。

次に②美少女キャラクターがゲストキャラとして登場する。
以下、自分のブログより転載。

わさびになってからのドラえもんは、第一作品である「恐竜2006」を除き、何故かゲストキャラクターは女の子が存在する。
魔界は美夜子さん、緑はリーレ、宇宙はモリーナ、人魚はソフィア、鉄人はリルルである。どれもストーリーの重要なポジションとして存在する。
これは自分が考えるに、ドラえもんファンの女の子を増やしたいという考えから来ているのではなかろうか? 春の季節にアニメ映画のライバルとしてプリキュアが存在するのだ。人魚大海戦の興行収入がイマイチ伸びなかったのはプリキュアが絶好調過ぎたから、と考えているのだがどうだろう?
それはともかく、とにかく女の子を重要なゲストキャラクターとして迎える風潮が今のドラえもんにはずっと続いている。しかも皆が美少女。(モリーナは美少女なのか?と 思ったがどこかで「謎の美少女」として紹介されていたので納得出来ないが美少女なんだろう)ならばこちらのブログでも美少女キャラクターを出そうと思う。

補足すると、映画クレヨンしんちゃんにも同様の傾向が見られます。決して偶然じゃないでしょう。
今作において、それまでは年上のようなキャラが登場していたので、今作はいっそのこと年下のキャラクターを出そうと思いました。それが、今作のエルザだったという訳です。
このエルザについての細かいことはブログで大量に書きまくっているので、もし良ければブログの3月、4月あたりの記事をご覧ください。見苦しい駄文ですが。

③ドラミが登場する。
何故か毎年出てくるドラミ。正直自分は不要と考えているのですが、まあ、色々と事情があるんでしょう。
ただし、緑の巨人伝や新鉄人を見る限り、「とりあえず出れば良い」という感じなので、僅かな出番ですが登場しています。

④泣きの要素を入れる。
さて、問題がこれです。
「泣き」が無いと映画ドラえもんとして「失格」みたいな風潮があります。映画ドラえもんには「泣き」をやたらと期待されていると言うべきでしょうか?
人魚大海戦でも突如「あなたを愛しています」とか「海がキレイでよ」と泣き出すジャイアンとか、ワケのわからない演出が取って付けたように出てきます。
何故こんなことになったかと言えば、観客が「泣き」を過剰評価する風潮があるからだと思います。泣ける映画を否定するつもりはありませんが、だからと言って全ての映画に泣き要素を入れてどうするんだと思うのです。名探偵コナンあたりは別に泣き要素もあるわけでもないのに数字伸ばしていますし、ストーリーがちぐはぐになっても泣きをやれば数字が伸びる、というもんでも無いだろうと思うわけです。
しかしながら、泣き要素が現場に求められているのであれば、それに対抗するこちらも何とか泣き要素を考えるしか有りません。
どうせやるのなら、最初から泣き要素というか、人間ドラマを主体としたストーリーを作ることにしました。

ということですので、美少女キャラを出して徹底的に泣き要素を盛り込みつつ、適当にドラミを出し、大体90から100分の枠に収めるというのが今のドラえもん映画に求められていることではないか? と思います。

次に、どうやったら売れる映画になるかを考えました。
言うまでも無いですが、売れないコンテンツに商業的な価値はありません。なので、脚本を考える際にはどうやったら売れるのかを考える必要があります。
しかし、今作にて原作となるのが「モアよドードーよ永遠に」。はっきり言って、新たな冒険が始まるような内容でも、人魚大海戦のような町が水に沈むようなインパクトのあるビジュアルも無い、この地味な原作をどうやったら魅力のある大長編とするのか。
更にこの原作でストーリーを作るに当たって最大の問題点として、「ぶっちゃけ、子供たちは絶滅動物に興味なんて持ってくれないだろう」ということでした。恐竜ならまだしも、モアやドードーが大好き! なんて子供はゼロでは無いと思いますが非常に少ないと思われます。
「モアよドードーよ永遠に」では、のび太がモア達を助ける、だけのストーリーで、絶滅動物達に感情移入する必要性はあまりありません。しかし大長編にするに当たって何かしらの工夫が必要だと思われます。
なんとか絶滅動物に興味を持ってもらうように秋田犬のエピソードを挿入したり、人間によってケガをしている等、同情されるような演出を追加しています。
それでも、地味、という印象を拭うことは出来ません。今の地球上では見ることが出来ない動物がたくさんポスターに描かれていても、果たして子供達は興味を抱いてくれるのか甚だ疑問です。
しかも、冒険の舞台は島。島での冒険は地味と思われる危険性が非常に高いのです。
それを証明するのが2010年公開の『超劇場版ケロロ軍曹 誕生!究極ケロロ奇跡の時空島であります!!』。この映画は144スクリーンで興行収入2.3億と前年の約半分となり、興行的には「大失敗」という形になってしまいました。
その理由として、前年度の映画の評判が悪かったという理由も挙げられますが、当時テレビで流れていたCMが冒険色が薄かったという声も挙がっています。ケロロ達が陽気に南の島でバカンスを楽しんでいたりする映像はあっても、巨大な敵やガチなバトルシーンが全く無かった為、男の子の興味を惹くことが出来なかったのではないか、と。

「モアよドードーよ永遠に」からの映画も、絶滅動物に興味を持ってくれなければ、かなり痛いです。南の島で大冒険! と予告を打って、「地味っぽい」と思われたら、もう「終わり」です。

我々ドラえもんは、ケロロの失敗から学ぶべきです。

その為に、自分は絶滅動物そのものではなく、他の角度からこの映画を盛り上げる方向性を考えました。
それが、バトル要素です。
青と赤の巨大な旗、対立する2大勢力。ボロボロになったのび太がボクシングのグローブを振り上げている姿。戦闘のイメージをひたすら押し出すことで、地味な動物、地味な舞台という点から目を逸らさせるようにしています。
その代償として、絶滅動物のモアとドードーはキャラが弱くなってしまいました。当初は「ラリィ」に「ガム」と名付けて、キャラ付けもしたかったのですが、尺が足りず、この2匹のドラマはバッサリと切り捨てました。
今作の成功に於いて最重要となるのは「泣き」と「派手」なので、仕方がありません。

次に作品内のSF要素について。
それまで藤子プロ作品から批判の対象となっていた、「描写がファンタジー過ぎる」という点について、色々と考えました。
宇宙漂流記のラスボスが「悪意の固まりのような生命体だったのかもね」。太陽王では普通の人間が魔法を堂々と使う描写、ふしぎ風使いでは風で空を飛ぶ人間など。敵が宇宙人なら「緑の巨人」とか「水を操るだけで全宇宙を支配できる(らしい)伝説の剣」に対して突っ込むことが出来ないんですが、それじゃあ今後のドラえもんは全部敵を宇宙人にする、というワケにもいかないでしょう。

で、まず今作で問題となったのは、何故オオカミがでっかくなったのか?
企画を考えた初期段階から、敵は巨大化したニホンオオカミと決めていたので、何かしらの方法でニホンオオカミがでっかくなったことを説明しなくちゃいけません。しかも短くわかりやすく。
これに関してもブログで長々と語っていますが、とりあえず笛の音色で成長したということにしました。
欧州研究大学教授のジョエル・ステルンナイメールという人が、「音楽は植物だけでは無く、人間への薬としての効果もあるかも」、ということを言ってました。これでなんとかニホンオオカミと人間の子供が100年間も生きているということにしました。
100年間も子供のまま、というのを何とか科学的に見せるために、スネ夫にNEOTENY(幼形成熟)という言葉を使って語らせました。ややこしい話題になったのを、のび太に「ピーター・パンみたい」と言わせてごまかしています。

次に問題となったのはどうやってそこまでオオカミが来たのか?
古代の船、古くさい飛行船などを考えてみましたが、どれも絵的にファンタジー過ぎて説得性に欠けます。一番いいのは「船が島の形をしている」こと。これなら、海に漂っているのに人間に発見されなくとも不思議ではありません。
そこで思いついたのが「幽霊島と呼ばれている中ノ鳥島を実は船だったことにする」ということでした。
調べてみると、当時から数が減少していたアホウドリが何百万といたという、絶滅動物達が集う島として都合が良い事が書かれていたので、じゃあこれが実は水草だったということにしよう、と。この島は「地図に載ったにも関わらず実在しない」という奇妙な島なので、今更この企画で沈めたり爆発させたりしても、特に支障は発生しないと思われます。
何故島が自由自在に動き回るのか? とかリン鉱石が大量にあるからと言って、爆発なんてするか? というツッコミどころは有ると思いますが、実際の所そんな島は実在しませんのでその辺りは結構いい加減です。誰も確かめようがありませんし。

物語として盛り上げる為に、今作はのび太とドラえもんが前面的に立っています。
ドラえもん映画を見に来る子供たちはドラえもんかのび太、だいたいこのどっちかの活躍を期待しているのではないかと思われます。なので、このふたりは出来る限り格好良く描きました。
しかし、その代わり静香ちゃんやスネ夫は何だか地味になってしまいました。スネ夫はまだしも、静香ちゃんはセリフすら少ないという有様です。まあいいでしょう。新鉄人兵団で十分活躍したし。

物語の構成が実に単純というのは自覚しています。この辺は自分の力量ではどうにもこうにも出来ませんでした。基本的に2つの変哲もない島が舞台なので、複雑な構成にするのが難しかったのです。
ただ、複雑な構成は尺を喰うという問題と見ている側がややこしくなるというのもあるわけで、単純な構成が一概に悪いとは言えないのではないかと自己弁護しておきます。次の機会があれば、タイムパラドックスとか伏線として使用していた道具で大逆転とかそういう要素も取り入れられたらいいなーと適当に考えています。

次に100年というキーワードについて。
2012年はドラえもん生誕まであと100年という節目っぽい年です。商業的にも100年というキーワードを最大限に利用しない手はありません。
なので、設定をやや強引ながらも、100年前にエルザとニホンオオカミが出会ったということにしました。1912年にはニホンオオカミは既に絶滅していると考えられていますが、イギリスでペットとして飼われていたので、把握されていなかったということで弁解しておきます。なお、ニホンオオカミについては未確定ながらも近年の目撃談が未だに多数存在しており、また2巻の「オオカミ一家」では「ドラえもんワールドでは現在に於いてもニホンオオカミは存在する」ということになってますので、誤った知識を子供達に植え付けるような問題にはならないかと。

100年後の世界が楽園になるように、というメッセージが、被災した子供達への応援にもなればいいかなー、なんて思っています。

バトル、泣き、エコ、スコシフシギ、ドラえもん生誕マイナス100年キャンペーン、被災地へのメッセージ、ドラミ。
映画ドラえもんとして、これだけ入れておけば十分でしょう。

長くなりましたが、作品内での細かい所は解説のページで更に解説しているのでそれをご覧ください。


今作の製作にあたって、ブログにてコメントや絵、更には動画まで製作してくれたmathelectone君には本当に感謝しています。もしも「エルザは笛を吹いているイメージ」と言ってくれなかったら、このストーリーは完成しなかったかもしれません。

藤子・F・不二雄先生、なんとも粗末な出来ですが、どうにか苦笑い程度に収まって頂けるくらいの稚拙さであることを願うばかりです。

公式スタッフの皆さん、今年は死ぬ気で頑張ってください。
藤子先生に肉薄した物語は作れないのは当然でしょうが、こんなど素人がほぼ一人で作った話なんて、軽く鼻で笑い飛ばせるくらいの程度には出来ると思うのですが。

ここまで読んでくださった皆さん。
真の映画ドラえもんは2012年、3月公開予定です。是非とも見に行きましょう。
もちろん自分も見に行く予定です。
見終わったときに、「そう言えば、フザけた同人サイトがあったなー」と、このサイトを思い出してストーリーの比較なんて楽しみ方をしてくれれば、また面白いと思います。
その時、「さすがにシンエイ動画は格が違った。さすがプロだ、ちがうなあ……。それに比べて何だこりゃ、このしょうもない話は? ていどひくい」という感想になることを自分自身も願っています。

何だかんだ言って、2012年の公式映画ドラえもんを一番楽しみにしているのは間違いなく自分ですからね!

2012年7月15日

ハル

※このあとがきは「のび太と奇跡の島」のタイトル発表以前に書いたものです。

細かい解説ページへ。



ここは「2012年映画ドラえもんを勝手に自作するブログ http://blog.livedoor.jp/doraeiga2012/」の情報をまとめるサイトです。
公式ドラえもん関係各社とは何の関係もありません。


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